【シングリッシュからインド英語まで】英語の多様性を楽しもう

こんにちは、TORAIZ イングリッシュコンサルタントのYukiです!

近年、日本からの海外赴任先としてシンガポールやインドを選ぶ企業が増えています。現地で働く上で欠かせないのはもちろん英語ですが、実際に耳にするのはアメリカやイギリスの標準的な英語だけではありません。その土地ごとに歴史や文化を背景にした方言英語が存在し、シンガポール英語(シングリッシュ)やインド英語はその代表格です。一見すると聞き取りづらく感じることもありますが、実は学習を続ける上で大きな刺激やモチベーションになる魅力にあふれています。

本記事では、シンガポール英語とインド英語の特徴や魅力を紹介しながら、多様な英語に触れることが学習やビジネスにどう役立つのかを考えていきます。

 

シンガポール英語はリズムがユニーク

シンガポール英語(通称シングリッシュ)は、中国語やマレー語の影響を受けて、独特のリズムや語尾の“lah”や”lor”などが特徴的です。はじめて聞くと違和感を覚えるかもしれませんが、そのリズム感に慣れると英語がより親しみやすく感じられることも。
「世界中に正しい英語はひとつだけではない」と気づくことが、自分の英語に自信を持つ第一歩になります。

 

語尾の「lah」が場を和ませる

シンガポール英語でよく使われる「lah」は、文末につけることで強調や親しみを表現します。たとえば “Don’t worry, lah.” は「気にしないでよ、ね!」という柔らかいニュアンスになります。実際に現地の同僚が会議後に”Good job, lah”と声をかけてくれると、ちょっとした励ましや距離の近さを感じられます。

・会議後の同僚との会話
A: “I wasn’t sure if my presentation was clear enough.”
(自分のプレゼン、わかりやすかったかな…)
B: “Clear, lah! Everyone understood.”
(バッチリだよ、みんな理解してたよ。)

・仕事終わりに声をかけられる場面
A: “Today was really stressful.”
(今日は本当に大変だったよ。)
B: “Relax, lah. Tomorrow will be better.”
(リラックスしなよ、明日はもっと良くなるさ。)

このように”lah”は友好的な空気を作り出す魔法のような言葉で、現地の人との距離をぐっと縮めてくれます。

 

直訳表現がユーモアを生む

シングリッシュでは中国語の影響を受けた直訳的な英語が使われることがあります。たとえば “Can or not?” は「できる?できない?」という意味ですが、シンプルかつ独特な響きに初めは驚かされます。慣れてくると「通じればいい」という割り切りや、多様な表現の面白さを実感できるでしょう。

・会社の昼休み
A: “We go hawker centre for lunch, can or not?”
(ホーカーセンターでランチ行こうよ、どう?)
B: “Can lah!”
(いいよ!)

・プロジェクトの相談
A: “Tomorrow we finish this report, can or not?”
(明日このレポート仕上げられる?)
B: “Try, can. But very tight, lah.”
(頑張ればできるけど、かなりタイトだよ。)

以下の動画では、現地シンガポールで日常的に使われている シングリッシュの生きた会話が収録されています。
特に語尾の”lah”や”lor”などが自然に会話に溶け込んで使われており、教材ではなかなか触れられないリズムやイントネーションが体感できます。

多言語社会が生んだ、インド英語の個性と説得力

インド英語は、イギリス統治時代の影響を残しつつ、ヒンディー語やタミル語など多言語社会ならではの発音や表現が特徴です。明瞭で力強いイントネーションは、プレゼンや会議での説得力を高め、現地のビジネスシーンでも存在感を発揮します。独自の表現やリズムを理解することで、現地チームとのコミュニケーションがスムーズになり、国際的な場での対応力も身につきます。

 

独特のイントネーションが説得力を増す

インド英語は、母音を強く長めに発音し、単語ごとにアクセントを置く独特のリズムが特徴です。また、文全体の語尾を少し上げるような抑揚や、文頭の強調によって「重要なポイント」を際立たせる話し方が自然に身についています。このリズムや抑揚を理解すると、会議やプレゼンでの説得力がぐっと増します。

(カナ付き・抑揚強調)

・会議でのプレゼン
A(インド人同僚): “*We NEED to FINISH this TASK today~?”
(ウィー ニィード トゥ フィニィッシュ ディス タァスク トゥデイ〜?)

NEEDFINISHTASK に自然にアクセントがあり、重要性がすぐに伝わるのがポイント。語尾が少し上がることで、「今日中にやらなきゃ」という緊張感も感じられます。

・チームミーティングでの指示
A: “Please~ make sure the CRITICAL points are clear~.”
(プリーズ〜 メイク シュア ザ クリティカル ポインツ アー クリア〜)

文頭の Please~CRITICAL が強調され、語尾の上がりで注意を自然に引きつけます。

・日常会話での注意喚起
A: “Don’t forget~ to submit your REPORT by evening~.”
(ドォント フォーゲット〜 トゥ サブミット ユア リポォート バイ イーブニング〜)

Don’t forget~”の伸ばし方と語尾の上がりで、軽く促されている感覚になり、重要単語が印象に残ります。

インドへの赴任経験者からは「同じ内容でも、イントネーションだけで聞き手の注意を引きつけられる」といった声が多く聞かれます。

 

現地ならではの表現が親近感を生む

インド英語には独自の言い回しも多く、“Do the needful.”(必要なことをしてください)といった表現はその代表例です。フォーマルな依頼文として広く使われ、現地の人々とのやり取りに取り入れると、ぐっと距離が縮まります。最初は違和感を覚えても、使ってみると「文化を共有している」という一体感を味わえるのが魅力です。

やり取り例

・社内メールでの依頼
A(インド人同僚): “Kindly do the needful and send me the report by tomorrow.”
(必要なことを済ませて、明日までにレポートを送ってください。)

・日常的なやり取り
A: “The printer is not working.”
B: “Okay, I will do the needful.”
(わかった、必要な対応をしておくよ。)

直接的な指示よりも柔らかく聞こえ、協力的な雰囲気が生まれる感じがしますね。

この動画は、インド英語の特徴がよく表れた発話シーンを集めています。
母音の伸ばし方、語尾の抑揚、アクセントの置き方など、日常会話で自然に出るイントネーションがそのまま聞けます。
会議やビジネスで求められる明瞭さや説得力を兼ね備えた話し方の参考として、特におすすめです。

 

 

 

多様な英語に触れるとリスニング力が鍛えられる

非ネイティブの英語は、一見すると理解しにくいこともあります。しかし逆に言えば、それに慣れることで「どんな人の英語でも聞き取れる耳」が育ちます。これは国際的な場で非常に役立つスキルです。ネイティブ英語だけでなく、多様なアクセントに触れることが「実用的な英語力」につながるのです。

 

国際会議で頼られる存在に

国際会議では、参加者全員がネイティブスピーカーということはほとんどなく、様々なアクセントや話し方が飛び交います。その中で、多様な英語のアクセントに対応できる人は「内容を正しく理解できる人」として自然と信頼されます。

赴任経験者の体験談では、例えばインド人・シンガポール人・アメリカ人が入り混じった会議で、周りの同僚が聞き取りに苦労している中、自分だけが正確に議論のポイントを把握できたことで、会議後に「ありがとう、助かった」と直接感謝されたケースもあります。

また、多様なアクセントを理解できる力は、単に聞き取る能力だけでなく、適切な質問や発言をタイムリーに挟む力にもつながります。結果として、会議で発言する機会が増え、意思決定にも関わることができるため、海外赴任者や国際的なビジネスパーソンにとって大きな武器となります。

 

英語学習のモチベーションが続く

「英語はアメリカ英語かイギリス英語しかない」と考えると、文法や発音の完璧さに囚われてしまい、話すこと自体にプレッシャーを感じがちです。しかし、世界の人々が自分流の英語を話していると知ると、完璧でなくても伝わればよいという考え方が自然に身につきます。

学習者からは、「インド英語やシングリッシュを聞くようになって、訛りがあっても問題ないと理解できた」「自分の英語を話す勇気が出た」という声が多く聞かれます。さらに、異なるアクセントに触れることでリスニング力の幅が広がり、より実践的な英語力が身につくため、学習の達成感も大きくなります。

具体的な例として、オンライン英会話や国際チームでのチャットで、ネイティブ発音と非ネイティブ発音が混在する場面に慣れると、「聞き取れない…」という焦りが減り、自信を持って発言できるようになります。これにより、学習のモチベーションが長期的に維持できるのも大きなメリットです。

 

まとめ

シンガポール英語やインド英語といった方言英語は、決して「正しくない英語」ではなく、世界の多様な英語表現の一部です。語尾の「lah」や独特のイントネーション、現地ならではの表現に触れることで、単なるリスニング力の向上だけでなく、実際のビジネス現場での理解力や説得力、会話の柔軟性を鍛えることができます。

また、多様な英語に触れる経験は、学習者自身の英語への自信やモチベーションにも直結します。「完璧でなくても通じる」という感覚を身につけることで、自分らしい英語を話す勇気が湧き、学習を長く続けることができるのです。

海外赴任や国際的なコミュニケーションを考えると、ネイティブ英語だけでなく、様々な国や地域の英語に触れることは大きな財産になります。ぜひ、シンガポール英語やインド英語のリズムや表現を楽しみながら学び、世界の人々と自信をもってつながる英語力を身につけていきましょう。